2011/06/25

InDesignによる欧文組版の基本操作その6

ハイフネーション その2
今回は、前回に引き続き、InDesignでの「ハイフネーション」について、手動で入れる場合の機能や扱い方について、説明します。
まず、以下のような場合に、手動でのハイフンが必要になります。

1. その単語自体にハイフンが必要な場合。
  例)twenty-four hours / ten-year-old boy / half-brother

2. 行末で自動でハイフネーションされているが、
  その場所でないところにハイフンを入れたい場合。 

1. の場合は、音節ではなく、単語を組み合わせて1つの語句としての意味を持たせるためのハイフンですので、普通のキーボード入力でハイフン入力してよいものです。

2. の場合について説明します。
まず、InDesignの辞書にて、その単語のどこにハイフンを入れることが可能か、
確認することができます(もちろんお手持ちの辞書で確認されてもOKです)。
該当する単語をカーソルで選択したのち
InDesignのメニューバー「編集」→「欧文スペルチェック」→「欧文辞書...」を選択します。
※文字テキストに対し、文字設定パレットの言語が、必ず「英語」または「米語」、その他該当する言語の設定にしてください。


以下のウィンドウが表示されます。
 上記ウィンドウの右側「ハイフネーション」をクリックすると...
上記のようにハイフネーションの候補が表示されます。
2つの~(チルド)が表示されているところは第2候補、1つの~が表示されているところは、第1候補です。このほか、許容範囲内の位置として候補がある場合は、3つの~が表示されます。

では、実際に「neighbor-」となるようにハイフンを入れます。
下記は避けるべき方法です。

×「neighbor」のあとに、キーボードから直接、ハイフンを手入力する。
×「neighbor」のあとに「改行(または強制改行)」を入れて、直接ハイフンを手入力し、
  その後、字送りで調整する

この方法で処理してしまうと、その後修正が入り、この単語が行末でなくなった際、ハイフンが文中に表示されてしまい、ミススペルとなりますし、また、段落末でないところに改行を入れてしまうのは、日本語組版でも同じことですが、修正の際、不要な労力が必要になってきます。

任意ハイフン
 「任意ハイフン」という機能を使い処理するようにしましょう。
任意でハイフンを入れたい箇所にカーソルを置いて、
メニューバーより「書式」→「特殊文字の挿入」→「ハイフンおよびダッシュ」→「任意ハイフン」を選択します(ショートカットキー「Command+Shift+-」でもOKです)。

「制御文字を表示(Command+option+I)」の状態にしておくと、任意ハイフンの制御文字が確認できます。
もちろんこれは、制御文字ですので、印刷されませんから、修正などで、単語の位置が移動し、ハイフンが不要になっても、わざわざ削除する必要がありません。

行が送られてしまった場合は、「字送り」などで調整します。
「手入力ハイフン」「自動ハイフン」「任意ハイフン」の制御文字を、下図で比べて確認しておいてください。(手入力の場合は制御文字はありません。)

次に、「このハイフンはどんな場合でも行末で分離させたくない」という場合のハイフンの入力方法を紹介します。

分散禁止ハイフン
通常、原稿からそのまま流し込んだ文字データや、手入力した場合、ハイフンは、



のキーにて入力されます。最初に示した例の「twenty-four」のような場合です。
しかし、下の例のような、固有名詞について、単語としてハイフンは入っているが、行末でハイフンで分離したくない場合があります。
このような場合、普通のハイフンではなく「分散禁止ハイフン」に変更しておくことで、行末での分散を避けることができ、常に同じ1行のラインにしておくことができます。
該当するハイフンを選択し、メニューバー「書式」→「特殊文字の挿入」→「ハイフンおよびダッシュ」→「分散禁止ハイフン」を選択すると、入力されます。
「分散禁止ハイフン」は見た目は通常のハイフンと全く変わりません。特別な制御文字があるわけでもありませんので、もし作業の途中で通常のハイフンに戻す必要がある時は、「検索・置換」機能で検索し、置換または再入力をします。
上記を選択すると検索文字列に「^~」が表示されます

分割禁止
「分割禁止」機能は日本語組版でも使用されますが、ハイフネーション処理の有無に限らず、2行にまたがりたくない単語やフレーズを一行におさめるることができます。
文字パレット(またはコントロールパレット)のプルダウンメニューの中にあります。

Enダッシュ、Emダッシュ
ハイフン入力と同じメニューに項目がある、「Enダッシュ、Emダッシュ」について簡単に説明しておきます。
ハイフン「-」の他に、Enダッシュ「–」、Emダッシュ「—」というものがあります。英文では、Enダッシュは「1958〜60」のような場合の「〜」に相当します。また「日米間で」のような場合も「U.S.–Japanese」のように使われます。

Emダッシュは、日本語の文章で使われる2倍ダーシのような役割です。よく原稿上ではダブルハイフン「--」や「スペース+ハイフン+スペース」などで代用して入力されていることがありますので、流し込みの際には「検索・置換」などで確認し、変換しましょう。

入力方法は、上図赤枠の箇所から入力可能です。キーボードからは、
Enダッシュ  option + ハイフン(「ほ」のキー)
Emダッシュ option+shift+ハイフン(「ほ」のキー)
(ウィンドウズの場合はoptionキーの代わりに「alt」キーを使用します)

●追記:Windowsでの便利な入力方法についてコメントを頂きました。
Altキーを押してコード入力する方法でしたら、WondowsのInDesign、WORD、メモ帳のどれでも共通で入力できます。(テンキーでの数字入力が必要です)
Enダッシュ:Altを押したままテンキー0150と入力
Emダッシュ:Altを押したままテンキーで0151と入力   

●追記:日本語でいう2倍ダーシの代わりに、Emダッシュを使用せず「スペース+Enダッシュ+スペース」を使用する場合もあります。この場合、通常のスペースの代わりに、下図の「分散禁止スペース(固定幅)」「細いスペース」などを使用することで、前の単語と離れて行頭になってしまっうことを避け、また、1行に入る単語数のバランスによってスペースの幅が大きくなってしまうことを避けることができます。通常のスペースのまま、上述の「分割禁止」を使用することも可能です。
 
以上です。

2011/06/16

InDesignによる欧文組版の基本操作その5

前回までの基本的な事項をまとめます。

  1.(段落パネル)コンポーザ=欧文コンポーザ
  2.(文字パネル)文字揃え=欧文ベースライン
  3.(段落パネル)行送りの基準位置=欧文ベースライン
  4.(段落パネル)グリッド揃え=なし
  5.文字パネルカーニング=メトリクス
  6.引用符英文引用符を使う。
       (半角引用符[いわゆる「まぬけ引用符」は使わない。)

ハイフネーション その1
今回は、InDesignでの「ハイフネーション」について、その機能や扱い方について、2回に分けて説明します。InDesignでのハイフネーションは、InDesignの辞書に基づいて自動でハイフンを入れる方法と、手動でハイフンを入れる方法があります。まず、自動でハイフンを入れるための説明をします。

InDesignでのハイフネーションは、そのテキストに対し、「文字パネル」で指定されている「言語」の辞書に基づいて入ります。
テキストをオールセレクトし、上図の赤枠の部分を、該当する言語に変更してください。
英語の場合、アメリカ英語やイギリス英語でもハイフネーションの位置が変わりますので、必ず確認しましょう。

言語が「日本語」のままになっていると、ハイフネーションは基本的に入りません。
和欧混植の場合は、まず、オールセレクトで全てに「日本語」をあて、その後、再度オールセレクトで「米語」をあてると、1バイト文字の英数字にのみ「米語」が設定されます。
左は言語が全て「日本語」、右は欧文部分は「英語:米語」

ハイフネーションの設定は、「段落パネル」のプルダウンメニューより行います。
赤枠の上側「ハイフネーション」は、ハイフンを使うか使わないかの「ON/OFF」の設定です。下側の「ハイフネーション設定」ウィンドウで細かい設定を行います。
※上図はCS4です。CS3では j)の文章表現が違っています。CS2以前では、j)はありません。  
a) ハイフンを使うか使わないかの「ON/OFF」です。

b) ハイフネーション処理をする単語の最小文字数を指定します。
  デフォルトでは5文字になっていますので、「often」などが文末にきた時に
  「of-ten」のように分かれます。

c) 単語の先頭を何文字目から切るかを指定します。
   デフォルトでは2文字になっているので、「already」が行末にきたときに、
  「al-ready」のように分かれます。

d) 単語末を何文字目から切るかを指定します。
  デフォルトでは2文字となっているので、「talked」が文末にきたときに、
  「talk-ed」のように分かれます。

e) 連続して何行までハイフンを続けるかの制限をかけます。
  デフォルトでは、最大3行まで続けてハイフンが入り続けることができます。

f) 段落設定が「左揃え」で「欧文単数コンポーザ」を使用している時のみ有効な機能です。テキストフレームの右端からどれくらいの距離までの間でハイフンが入るかの設定をします。
しかし、実際には「右端から何mmまではハイフンは入れない」という細やかな設定はできず、数値を増やすとハイフンの入る割合が減り、文末がややでこぼこ感のある感じになります。「なるべくハイフン処理をしてでこぼこ感を出したくない時」は「0」にし、「少しでこぼこ感を出したい時」は「5〜10mm」くらいの数値から調整します。効果の具合は、使用しているフォントやサイズにもよりますので、使用する場合は、全体にバランスをみながら決めていきます。
上は数値「0mm」下は「10mm」。


g) スライドバーで、全体的にハイフンを多めにするか少なめにするかの調整ができます。
  
h) 大文字で始まる単語に対し、自動でハイフンを入れるかどうかのON/OFFです。大文字で始まる単語には固有名詞や人名が多いため、これらに対してハイフンを入れない場合、または入れても気を配る必要がある場合は、ここのチェックを外し手動で処理するようにします。

i) 欧文組版では、基本的に段落末の単語はハイフネーション処理はしない方がよいので、通常はチェックを外しておきます。しかし、短め目の組み幅で、1〜3行の短い文章が続くような場合、段落末に長い単語がきた場合にハイフネーション処理が必要になってきます。そのような場合に使用すると便利です。

j) 欧文組版では、ページをまたがってハイフンで単語が切れてしまわないように気をつけます。同様に、2段組の場合やフレームが分かれる場合も、その境目で単語がハイフンで切れないようにすることが望ましいですが、文章量や組み幅、フォントサイズなどによっては難しい場合があります。そのような場合はチェックを入れ、許可します。

デフォルトの設定を使わない
ここで考えたいのは「デフォルトのままでいいのか?」ということです。これは私の経験値からの見解ですが、InDesignが組版ソフトとしてメジャーになってから、欧文組版でハイフンがとても目につくようになったと思います。「目につく」というのは「多すぎる」という印象です。これは、多くの場合「デフォルトのまま」作業しているからではないか、と感じています。そこで、今回、b) c) d) e) の数値について、下記の設定をお勧めしたいと思います。
デフォルトのb)単語の最小文字数 5文字 と、c) d) 2文字の組み合わせでは、短い単語にこまごまとハイフンが入ってしまい、また、d) 最後の前の文字数が 2文字は「--ed」や「--er」などで細々と切れてしまうため、あまり見栄えがよくありません。もちろん 「--ed」「--er」などで切れるのがダメという意味ではなく、上記のような設定をしておき、こまごま切れるのをなるべく避け、でも入れたい場合は手動、またはその段落だけ設定を変えて調整する、という方法をとっていくと、読みやすく仕上がっていくと思います。

次回は「手動」で調整する場合についてなど、引き続きハイフネーションについて説明したいと思います。 

2011/06/09

InDesignによる欧文組版の基本操作その4

前回までの基本的な事項をまとめます。

  1.(段落パネル)コンポーザ=欧文コンポーザ
  2.(文字パネル)文字揃え=欧文ベースライン
  3.(段落パネル)行送りの基準位置=欧文ベースライン
  4.(段落パネル)グリッド揃え=なし
  5.文字パネルカーニング=メトリクス

英文引用符
今回は、InDesignでの「英文引用符」についての機能や扱い方について説明します。


まず、念のため、「英文引用符」についておさらいします。
各フォント名の上部にある引用符が、いわゆる「まぬけ引用符」と呼ばれているものですが、InDesignでは「半角引用符」と読んでいます。欧文ではこの半角引用符は使用しません。フォント名の下部にあるものが、そのフォントが持つ「正しい引用符」です。InDesignでは「英文引用符」と呼んでいます。この欧文書体の正しい英文引用符には、左右の向きがあります(openとclose)。必ずこの正しい英文引用符を使うようにしましょう。

まず、InDesignの「環境設定」内の「テキスト」の設定をします。下記の赤枠の箇所に必ずチェックを入れます。
これで、InDesign上で入力する場合は英文引用符に自動的になるはずなのですが(実際、英語版InDesignではこれでOKなのですが…)、日本語版InDesignの場合、この設定だけでは、キーボードで「Shift+2」や「Shift+7」で引用符を入力しても、まぬけ引用符が表示される場合が発生します。
実は、もう一カ所設定しなければなりません。「環境設定」の「欧文辞書」の設定です。
上図の中央の赤枠箇所に注目してください。各言語について、どの引用符を使うか、個別に設定できるようになっています。試しにいろいろな言語を選択して、表示される引用符が変わることを確認してみてください。フランス語やドイツ語がわかりやすいかもしれません。
そして、日本語については、デフォルトで「まぬけ引用符(半角引用符)」が設定されています。表示文字が小さくて見えにくいかもしれませんが、下図のプルダウンメニューの一番下がまぬけ引用符です。これを一番上の「英文引用符」に選択し直します。
日本語の「二重引用符(クウォーテーションマーク)」を一番上の「英文引用符」に変更する
「引用符(アポストロフィー)」も同様に、一番上の「英文引用符」に変更する
この作業をすることで、InDesign上で常に「英文引用符」を使用することが可能になります。

参考までに、ワードやテキストファイル、illustrator(もちろんInDesign)などで、アプリケーションの設定とは関係なく、ダイレクトに英文引用符を入力するキーを紹介しておきます。

Macの場合
“〈option+@〉  ”〈option+shift+@〉 ‘〈option+[〉  ’〈option+shift+[〉

Windows JIS配列の場合
“〈Alt+[〉  ”〈Alt+shift+[〉 ‘〈Alt+]〉  ’〈Alt+shift+]〉

Windows ASCII配列の場合
“〈Alt+[〉   ” 〈Alt+shift+[〉 ‘〈Alt+]〉   ’ 〈Alt+shift+]〉

※上記は日本語JIS配列のキーボードの場合ですが、使用しているキーボードによっては異なる場合があります。windows版についてはコメントにより情報頂きました。ありがとうございました!
次に、テキストの流し込みの際の引用符の設定です。
まず、上記の設定を済ませておきます。
テキストを流し込む方法は、
(a)「commond+D」または「ファイル→配置」
(b) ファイルを直接テキストフレームにドラッグする
(c) コピー&ペーストする
があると思います。上記の設定を済ませておけば、いずれの方法でも引用符は英文引用符になりますが、欧文の原稿ではイタリックやボールドがよく使われています。InDesignに流し込んだ際に、この原稿のイタリックなどを反映させるため、(c)のコピペは避けましょう。
(a)の場合、下図のように、配置の画面で「読み込みオプションを表示」に必ずチェックを入れます。「グリッドフォーマットの適用」は日本語用ですので無視します。「選択アイテムの置換」は流し込むテキストフレームが選択されている場合、チェックを入れます。
「開く」をクリックすると、原稿がワードやリッチテキストファイルの場合は、下図の画面が表示されます。赤枠のオプションの「英文引用符を使用」に必ずチェックを入れます。

原稿がシンプルテキストファイルの場合は、下図の画面が表示されます。
赤枠のオプションの「英文引用符を使用」に必ずチェックを入れます。
辞書も英語にしておくとより良いでしょう。
その他の設定部分は、必要に応じて、チェックを入れます。
この設定をしておけば、流し込まれたテキストは英文引用符が使用されます。

(b)のドラッグで流し込む場合は、最後に配置した時の設定で「英文引用符を使用」が選択されていなかった場合、まぬけ引用符のまま流し込まれてしまいます。最初に必ず(a)の配置による流し込みで確認してから、(b)の方法に移ってください。


以上のような設定と流し込みをすれば、英文引用符が使用され、まぬけ引用符を避けることができます。

そして、あと1つ、気をつけたいことがあります。
上記のような原稿を流し込むと、
となってしまいます。たとえInDesignの設定を正しくして、まぬけ引用符が避けられたとしても、アポストロフィーの使い方を間違ってしまう場合があります。正しくは、
とならなければいけません。他にも、


などのケースがあります。これらは全て手作業で修正することになります。
検索機能をうまく使うことで、見つけることができますが、今回は基本操作についての説明ですので、詳しくは別の機会に説明したいと思います。

以上です。

●6/22にご質問を頂きました「合成フォントの際の引用符」の扱いについて、こちらに追記いたします。

和欧混植用に、合成フォントを使用されている方が多いと思います。
その際、デフォルトの項目だけの設定ですと、引用符は和文になってしまいます。引用符を欧文用フォントにするためには下記の設定をします。

合成フォントウィンドウの左側のデフォルトの項目は「漢字」「かな」「全角約物」「全角記号」「半角欧文」「半角数字」ですが、これに「引用符用」の項目を追加します。
下図、右側の赤枠「特例文字」をクリックすると「特例文字セット編集」というウィンドウが出てきます。そこで、「新規...」をクリックし、特例文字セットの名前をつけたら、シングルとダブルの引用符を手入力、またはコード入力(直接入力というところ、プルダウンメニューになり、入力方法を選択できます。)します。必ずオーブンとクローズ左右とも入れてください。 入力する際の「フォント」は目的のフォントを表示しておいた方がよいですが、デフォルトで「小塚」などになっていても、引用符入力には問題ありません。
新しく追加された項目について、「半角欧文」と同様のフォント設定をします。
※下図は、引用符用の項目を「アポ」という名で追加した後です。
上記の設定をした後に、テキストにこの合成フォントをあてると、引用符は欧文になります。ただ1つ問題が発生します。テキスト全体にカーニング「和文等幅」があたっている場合、この欧文引用符の前後のアキがおかしくなってしまいます(特にオープン側の引用符)。「文字組アキ量設定」ではこの設定ができません。
この現象は、検索・置換を使って、テキスト中の引用符全てに「メトリクス」をあてることで、回避することができます。

2011/06/02

InDesignによる欧文組版の基本操作その3

今回で基本操作第3回目となりますが、このブログでは、InDesignで欧文組版をするための機能やその操作方法を説明しています。もし「InDesignの用語はわかるけど、欧文書体や欧文組版そのものについて、基本や言葉の意味がわからない…」または「もっと知りたい!」という方は、小林章氏 著『欧文書体』高岡昌生氏著『欧文組版』(ともに美術出版社 刊)をぜひお手元おいて確認されるとよいと思います。

前回までの基本的な事項をまとめますと、
  1.(段落パネル)コンポーザ=欧文コンポーザ
  2.(文字パネル)文字揃え=欧文ベースライン
  3.(段落パネル)行送りの基準位置=欧文ベースライン
  4.(段落パネル)グリッド揃え=なし
でした。
今回は「文字設定」のバネルの中の、「カーニング」「言語」(赤枠のところ)について説明します。
まず、文字設定パネルについて、日本語版と英語版で比較してみましょう。
左側が英語版、右側が日本語版です。日本語版の赤でバツをしている箇所は、日本語組版のための機能ですので、欧文組版では使用しません。「文字回転」については、一見和文も欧文もどちらにも使用しそうですが、これは日本語用の機能です。そのため、コンポーザを欧文設定にしていると、回転をかけても反映されません。
では、まず「カーニング」について説明します。


カーニング
一般的にフォントには、日本語フォントにも欧文フォントにもペアカーニング情報が設定されています。ペアカーニング情報とは「ある文字とある文字が並んだ時に、どれくらい詰めるのか」という情報です。

和文等幅
日本語版InDesignには文字のカーニング設定として、「和文等幅」「メトリクス」「オプティカル」の3種類があります。英語版には「和文等幅」はありません。

「和文等幅」は「日本語の文字はペアカーニング情報を使用せず、 欧文の文字のみペアカーニング情報を使用する」という設定になります。和欧混植ではとても役立つ設定です。実は、欧文のみの文章で使用しても問題はありません。

メトリクス/オプティカル
ただ、せっかくですので、欧文組版の時は、英語圏で通常使用されている「メトリクス」を使用することをおススめします。
先ほど述べた「ペアカーニング情報」は、フォントデザイナーがフォントを作成する際に、極めて慎重に細かく設定しているものです。見出しやロゴなどで特別なデザインをする場合は別としても、本文組みなどの長文については、 このカーニング情報を活かした「メトリクス」の設定を使用することをおススめします。

では「オプティカル」って…。
「オプティカル」はフォントに設定されているペアカーニングは無視して、「 InDesign独自の判断で均等に見えるようにする」機能です。
下の欧文組版の例を見てください。
上が「メトリクス」、下が「オプティカル」です。
上は「メトリクス」
こちらが「オプティカル」

もちろん、細かく文字と文字の間にカーソルをあてると、ツメ情報の数値が違っていることがわかりますが、ここでは細かい数値のことは考えないで、実際に読んでみてみましょう。
あまり英文を読む機会のない方がパッとみると、オプティカルの方が文字が均等にきれいに並んで見えるかもしれません。しかし、実際に読んでみると、メトリクスの方が、単語がキュッと引き締まって、単語の並びにリズム感が発揮されており、読みやすいことがわかるかと思います。オプティカルの方は、だんだん単語が間延びして見えてくるのではないでしょうか。
このリズム感のよい流れを活かすために、欧文組版では「メトリクス」設定を使用します。

では、「オプティカル」ってどんな時に使うの…?
1. URL
URLでは//の間がアキ過ぎるなど、手動での微調整な場合があります。このような場合にオプティカルを使うと、均等にならんで、URLとして読みやすくなります。
上は「メトリクス」、下が「オプティカル」

2. 電話番号・郵便番号などの数字とハイフン・Nダッシュ、ノンブルなど
全てのケースにあてはまるわけではありませんが、数字とハイフン、Nダッシュが並んだ時に微調整が必要な場合があります。またノンブルについては、本文中ではきれいな並びの数字も、ノンブルとして使うと詰め具合が少しばかり個性的に見えてしまう場合があります。そんな時にオプティカルをあてると、バランスがよくなることがあります。ノンブルにあてる場合は、マスターページのノンブル記号にあてます。
上は「メトリクス」、下が「オプティカル」
3. 異なるフォントを混ぜて使う場合
ペアカーニングは同じフォントどうしでの情報ですので、異なるフォントで組み合わせた場合は調整が必要です。このような時にオプティカルを使うと、ほどよいバランスになります。
上は「メトリクス」、下は「T」のみに「オプティカル」。
上記のような場合、もちろん1つ1つ手詰めしたほうが、よりきれいに仕上がると思います。しかし、本文中にたくさんある場合などは、検索・置換を利用して変換することで、組版の時間を節約して効率よくきれいに仕上げることができると思います。

言語
言語は、欧文のみの原稿の場合、必ず書かれているその言語を選ぶようにします。
InDesignには「スペルチェック」や「ハイフネーション設定(次回以降で説明します)」のための「辞書」があり、文字パネルでの言語の設定はこの辞書に関わってきます。英語の場合、イギリス英語、カナダ英語、米語の区別があり、またその中で、医学用語、法律用語の分類があります。該当する言語を設定しましょう。テキストをオールセレクトして「文字パネル」の言語から該当言語を選択してください。

和欧混植の場合は、全てに日本語があたっていると、欧文単語で行送りされる際のハイフネーションに制限が発生します。欧文単語には必ず該当する言語があたるようにしましょう。まず、オールセレクトで全てに日本語をあて、その後、該当する言語を再度選択します。そうすると、1バイト文字の英数字には、該当する言語が設定されます。

以上です。