2011/06/09

InDesignによる欧文組版の基本操作その4

前回までの基本的な事項をまとめます。

  1.(段落パネル)コンポーザ=欧文コンポーザ
  2.(文字パネル)文字揃え=欧文ベースライン
  3.(段落パネル)行送りの基準位置=欧文ベースライン
  4.(段落パネル)グリッド揃え=なし
  5.文字パネルカーニング=メトリクス

英文引用符
今回は、InDesignでの「英文引用符」についての機能や扱い方について説明します。


まず、念のため、「英文引用符」についておさらいします。
各フォント名の上部にある引用符が、いわゆる「まぬけ引用符」と呼ばれているものですが、InDesignでは「半角引用符」と読んでいます。欧文ではこの半角引用符は使用しません。フォント名の下部にあるものが、そのフォントが持つ「正しい引用符」です。InDesignでは「英文引用符」と呼んでいます。この欧文書体の正しい英文引用符には、左右の向きがあります(openとclose)。必ずこの正しい英文引用符を使うようにしましょう。

まず、InDesignの「環境設定」内の「テキスト」の設定をします。下記の赤枠の箇所に必ずチェックを入れます。
これで、InDesign上で入力する場合は英文引用符に自動的になるはずなのですが(実際、英語版InDesignではこれでOKなのですが…)、日本語版InDesignの場合、この設定だけでは、キーボードで「Shift+2」や「Shift+7」で引用符を入力しても、まぬけ引用符が表示される場合が発生します。
実は、もう一カ所設定しなければなりません。「環境設定」の「欧文辞書」の設定です。
上図の中央の赤枠箇所に注目してください。各言語について、どの引用符を使うか、個別に設定できるようになっています。試しにいろいろな言語を選択して、表示される引用符が変わることを確認してみてください。フランス語やドイツ語がわかりやすいかもしれません。
そして、日本語については、デフォルトで「まぬけ引用符(半角引用符)」が設定されています。表示文字が小さくて見えにくいかもしれませんが、下図のプルダウンメニューの一番下がまぬけ引用符です。これを一番上の「英文引用符」に選択し直します。
日本語の「二重引用符(クウォーテーションマーク)」を一番上の「英文引用符」に変更する
「引用符(アポストロフィー)」も同様に、一番上の「英文引用符」に変更する
この作業をすることで、InDesign上で常に「英文引用符」を使用することが可能になります。

参考までに、ワードやテキストファイル、illustrator(もちろんInDesign)などで、アプリケーションの設定とは関係なく、ダイレクトに英文引用符を入力するキーを紹介しておきます。

Macの場合
“〈option+@〉  ”〈option+shift+@〉 ‘〈option+[〉  ’〈option+shift+[〉

Windows JIS配列の場合
“〈Alt+[〉  ”〈Alt+shift+[〉 ‘〈Alt+]〉  ’〈Alt+shift+]〉

Windows ASCII配列の場合
“〈Alt+[〉   ” 〈Alt+shift+[〉 ‘〈Alt+]〉   ’ 〈Alt+shift+]〉

※上記は日本語JIS配列のキーボードの場合ですが、使用しているキーボードによっては異なる場合があります。windows版についてはコメントにより情報頂きました。ありがとうございました!
次に、テキストの流し込みの際の引用符の設定です。
まず、上記の設定を済ませておきます。
テキストを流し込む方法は、
(a)「commond+D」または「ファイル→配置」
(b) ファイルを直接テキストフレームにドラッグする
(c) コピー&ペーストする
があると思います。上記の設定を済ませておけば、いずれの方法でも引用符は英文引用符になりますが、欧文の原稿ではイタリックやボールドがよく使われています。InDesignに流し込んだ際に、この原稿のイタリックなどを反映させるため、(c)のコピペは避けましょう。
(a)の場合、下図のように、配置の画面で「読み込みオプションを表示」に必ずチェックを入れます。「グリッドフォーマットの適用」は日本語用ですので無視します。「選択アイテムの置換」は流し込むテキストフレームが選択されている場合、チェックを入れます。
「開く」をクリックすると、原稿がワードやリッチテキストファイルの場合は、下図の画面が表示されます。赤枠のオプションの「英文引用符を使用」に必ずチェックを入れます。

原稿がシンプルテキストファイルの場合は、下図の画面が表示されます。
赤枠のオプションの「英文引用符を使用」に必ずチェックを入れます。
辞書も英語にしておくとより良いでしょう。
その他の設定部分は、必要に応じて、チェックを入れます。
この設定をしておけば、流し込まれたテキストは英文引用符が使用されます。

(b)のドラッグで流し込む場合は、最後に配置した時の設定で「英文引用符を使用」が選択されていなかった場合、まぬけ引用符のまま流し込まれてしまいます。最初に必ず(a)の配置による流し込みで確認してから、(b)の方法に移ってください。


以上のような設定と流し込みをすれば、英文引用符が使用され、まぬけ引用符を避けることができます。

そして、あと1つ、気をつけたいことがあります。
上記のような原稿を流し込むと、
となってしまいます。たとえInDesignの設定を正しくして、まぬけ引用符が避けられたとしても、アポストロフィーの使い方を間違ってしまう場合があります。正しくは、
とならなければいけません。他にも、


などのケースがあります。これらは全て手作業で修正することになります。
検索機能をうまく使うことで、見つけることができますが、今回は基本操作についての説明ですので、詳しくは別の機会に説明したいと思います。

以上です。

●6/22にご質問を頂きました「合成フォントの際の引用符」の扱いについて、こちらに追記いたします。

和欧混植用に、合成フォントを使用されている方が多いと思います。
その際、デフォルトの項目だけの設定ですと、引用符は和文になってしまいます。引用符を欧文用フォントにするためには下記の設定をします。

合成フォントウィンドウの左側のデフォルトの項目は「漢字」「かな」「全角約物」「全角記号」「半角欧文」「半角数字」ですが、これに「引用符用」の項目を追加します。
下図、右側の赤枠「特例文字」をクリックすると「特例文字セット編集」というウィンドウが出てきます。そこで、「新規...」をクリックし、特例文字セットの名前をつけたら、シングルとダブルの引用符を手入力、またはコード入力(直接入力というところ、プルダウンメニューになり、入力方法を選択できます。)します。必ずオーブンとクローズ左右とも入れてください。 入力する際の「フォント」は目的のフォントを表示しておいた方がよいですが、デフォルトで「小塚」などになっていても、引用符入力には問題ありません。
新しく追加された項目について、「半角欧文」と同様のフォント設定をします。
※下図は、引用符用の項目を「アポ」という名で追加した後です。
上記の設定をした後に、テキストにこの合成フォントをあてると、引用符は欧文になります。ただ1つ問題が発生します。テキスト全体にカーニング「和文等幅」があたっている場合、この欧文引用符の前後のアキがおかしくなってしまいます(特にオープン側の引用符)。「文字組アキ量設定」ではこの設定ができません。
この現象は、検索・置換を使って、テキスト中の引用符全てに「メトリクス」をあてることで、回避することができます。

12 件のコメント:

  1. Windows 英語版だと英文引用符は以下のようなキーで入力できました。

    Windows JIS配列
    “ (Alt+[) ” (Alt+shift+[)
    ‘ (Alt+]) ’ (Alt+shift+])

    Windows ASCII配列
    “ (Alt+[) ” (Alt+shift+[)
    ‘ (Alt+]) ’ (Alt+shift+])

    記事を読むたびに知らないことが沢山あって恥ずかしい限りです...

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  2. apogeeさん、貴重なコメントをありがとうございました! コメントまで読んで頂くよう、追加でTweetします。InDesignでの欧文組版のストレスや不安が少しでもなくなるよう、皆さんで情報をシェアしていければと思います。今後ともよろしくお願いします。

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  3. 合成フォントの補足、ありがとうございました!
    特例文字までは検索でたどり着いていましたが、カーニング設定が必要だったのですね。
    CS4以降なら正規表現スタイルで段落スタイルに組み込むとすっきり解決できそうです。

    試してみた合成フォント中で、ヒラギノ角ゴW3+Frutiger 45 Lightの組み合わせだけは開始側の前のアキ
    がおかしいままでした。和文フォントを別のものに変更しても直らず、欧文フォントを変更すると正しくなるので、Frutigerに問題があるのかも。使い勝手のいい書体だけに残念です。

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  4. SUBIさん、貴重な情報ありがとうございます。私も勉強になりました。今度から「段落スタイルの正規表現スタイル」を使おうと思います。確かにスッキリいきそうですね。アポストロフィーの後もベタにする必要が発生するかと思いますので、この辺でも大活躍しそうです。
    私は、和文ゴシック系とUniversを合成フォントにすることが多いのですが、Universも開始側のアキがおかしくなってしまうんです。PostScriptからOpenTypeに乗り換えても同様でした。でも多少不便が生じても良いフォントは使い続けたいですので、うまいことInDesignを使ってこういうストレスを解消していきたいです。
    また、何かありましたら、情報共有させてください。よろしくお願いします。

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  5. 当方語学書を組むフリーランスとして独立し4年ほど経ちます。
    英語以外にもドイツ語やスペイン語などを請け負いましたが、この「マヌケ引用符」はもちろんのこと、単独アポストロフの扱いにしばしば手を焼くことがあります。
    すでにCS4やCS5を中心に使っていますので、積極的に「引用符にメトリクスを設定した正規表現スタイル」の使用を検討したいと思います。

    余談ですが、ロシア語はどのバージョンでもきちんと組めません(母音用アクセントがOpenTypeでは合成されないのです。TrueTypeに置き換えると親文字に合成されるのですが、フォーマットが違うフォントの混在はどうもすっきりしません)。

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  6. gazeさん、
    コメントありがとうございます。少々忙しくしておりまして、返信遅くなってすみません!
    ロシア語の件ですが、InDesignというよりは、使用する書体の問題のような気がしました。
    http://p.tl/q0Hg
    (↑URL ブラウザにコピペでお願いします。
      リンク貼れてないです。)
    にあるようなシリル文字用の書体を使われると解決するかもしれません。
    ご参考になれば幸いです!

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  7. お久しぶりです。
    正規表現スタイルを使った和欧混植をInDesign CS5で試してみました。

    合成フォントを作成:特例文字で一重・二重引用符に欧文フォントを指定
    段落スタイルを作成:合成フォントを指定、言語は日本語、カーニングは和文等幅、文字ツメ量は任意の値
    引用符用文字スタイルを作成:カーニングはメトリクス、文字後のアキ量はベタ

    以上の設定ののち、段落スタイルの正規表現スタイルで一重・二重引用符に引用符用文字スタイルをあてると、引用符がフォントも前後のアキも一発で正しく表示されました。ちょっと感動ものです。

    さらに応用して
    ・分割禁止だけを設定した文字スタイルを作成し、正規表現スタイルで ’s にあてる
    ・言語に任意の欧文言語、文字ツメ量0を設定した文字スタイルを作成し、正規表現スタイルで欧文文字にあてる
    これで、’sの行末行頭の分割防止、欧文部分の適切な言語設定、欧文部分の文字ツメ解除ができます。
    ただ、正規表現で欧文文字全体をスマートに指定する方法が分からず、とりあえず[\x20-\x7E]+に必要な文字や記号を足しています。もっといいやり方があるはずなのですが…

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  8. SUBIさん、書き込み、ありがとうございます!
    正規表現の組み込み、うまくいったようで何よりです。キュッと揃う感じがこちらにも伝わってきて、私まで嬉しくなります。応用でもうまいところ設定していると思いました。’sにプラスして、’m、’d、’veなども入れておけばさらに安心かなと思います。欧文文字全体を指定する場合は半角全部[\x20-\x7E]の方が、InDesignのメニューにある「欧文アルファベット」にいろいろプラスアルファするより、手っ取り早いんですね。勉強になります! これに、En/Emダッシュや引用符を細々足しているということなんですよね。英語環境だったら、Any characterで済むところ、日本語の全角文字を除くので、ある程度手間がかかってしまうのでしょうが、それでも、これを使えば格段に組版のイライラが解消されると思います。私も次の仕事から、さっそく導入したいと思います。また、ぜひ書き込みに来てくださいね。お待ちしています!

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  9. コンさん、
    DTP Boosterの欧文組版についてのセミナーを拝聴しました。「目から鱗」でした。どうもありがとうございました。ところで、当日おうかがいできなかった点につきましたこちらで改めて質問させていただきます。
    段落設定のOpentype機能に、プロポーショナルメトリウスという項目がありますが、こちらは通常のメトリウスと異なるのでしょうか。通常はオフのままでよろしいのでしょうか。
    ご教示いただければ幸いです。
    どうぞよろしくお願いいたします・

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  10. mayaokayさん、
    DTP Boosterのご参加、ありがとうございました!
    そして質問の書き込みも、ありがとうございます。
    プロポーショナルメトリクスは、和文のOpenType用です。プロポーショナルメトリクスの項目のあるところには「プロポーショナルメトリクス」「欧文イタリック」「縦または横組用かな」の3項目がセットになっていますが、ここはすべて和文フォント用(日本語用機能)となります。和文OpenType書体で、メトリクス値を使いたい場合は、「プロポーショナルメトリクス」を使用することが推奨されています。
    英語版にこの機能はなく、欧文書体ではここは効かないはずです。ですので、欧文書体ではオフにしておいて、文字パネルのカーニングの方のメトリクスを使用してください。試してみてください。

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  11. Konさん、ご指摘ありがとうございます。
    ’s、’m、’d、’veに加えて’t、’reも入れて正規表現でまとめてみました。
    ’(d|m|re|s|t|ve)
    これで動詞・助動詞まわりの短縮表現はかなりカバーできますね。

    記号を含めた欧文文字を正規表現で指定するのはなかなかやっかいです。
    基本の半角文字で構成されるASCII文字の範囲は[\x20-\x7E]または[ -~]で表しますが、英文表記に使用する文字を指定する場合、このASCII文字に適宜必要な文字を足すのが無難なのかなと思っています。
    現状の私の設定は最低限のこんな感じです。(ASCII文字に一重・二重引用符、ブリット、en・emダッシュを追加)
    [\x20-\x7E‘’“”•–—]+

    ちなみに、英語以外の欧文文字を含む、ANSI文字の文字範囲を正規表現で書いてみるとこうなりました。
    [ -~€‚ƒ„…†‡ˆ‰Š‹ŒŽ‘’“”•–—˜™š›œžŸ¡-ÿ]+

    かなり力技(ハイフンつなぎの範囲指定ができない部分はダイレクトに文字指定)ですが、なんとか全部カバーできました。
    ただし、ダガー†‡、エリプシス…、セクション§、計算記号±÷などが引用符と同様に和文フォント扱いになってしまいます。また、プライムなどそもそもANSI文字に入っていない欧文記号もありますので、このまま使用するのは難しいと思います。

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  12. 私の場合は案件によってアルファベットそのものが違うため、文字コード表と首っ引きで直接文字コードを範囲指定しています。
    さらにいつ外来語が出てくるか分からないというケースもあるため、なかなか厄介です。

    Rose Toyoko Kon さん:
    サイトご紹介ありがとうございます。
    既にこの案件は進行していまして、本文にはサンセリフを希望ということでInDesign添付のMyriad Proを使ったのですが、先述のような問題が起きてしまいました。
    今回の案件ではもう致し方ないため、ご案内のサイトで紹介されているフォントが手元にあったと思うのでテストの再組版をしてみます。

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