InDesignでは、フレームグリッドや文字組アキ量設定のような日本語組版用にとても優れた機能が搭載されています。実は欧文組版についても、とても役立つ機能が備わっています。これから数回にわたり、キレイで効率的な欧文組版のための機能とその使い方を紹介します。
キレイで効率的な欧文組版をするためには、InDesignでは、「段落設定」「文字設定」「環境設定」それぞれについて、基本的な設定をします。まず、「段落設定」のメニューの設定について、1つずつ解説していきます。
※使用される原稿は全てが欧文で、和文が含まれないことを前提とします。
欧文単数行コンポーザ/欧文段落コンポーザ
InDesignには、文字データに必ず設定がかかることになっている、4つの「コンポーザ」があります。欧文組版ではこの中の「Adobe欧文段落コンポーザ」か「Adobe欧文単数行コンポーザ」のどちらかを使います。
「コンポーザ」は適確な日本語訳が見つからなかったのか、InDesignのメニューでは、カタカナ表記でそのまま使用されています。コンポーザを辞書でひくと色々な意味がありますが、その中の「収拾する=収める」という日本語に置き換えると、何を意味しているかわかりやすい思います。
「単数行コンポーザ(single-line composer)」は1行ごとに単語をうまく収める、「段落コンポーザ(paragraph composer)」はその段落の中で単語をうまく収める、ということになります。
「Quarkやテキストエディタ(ワープロ)のように特に何も気にせず1行に入るところまで文字が流れ込む」という方式が「単数行コンポーザ」です。
「段落コンポーザ」は、InDesignの画期的な機能の1つで、「その段落内にバランスよく単語が収まるようにInDesignが自動で単語の送りをする」という設定です(つまり、ベテランのTypesetterを失業させる機能でもあります…)。
1行1行こだわりをもって組版したい場合は「単数行コンポーザ」を使い、手詰めでバランスをとりながら組版するといいのですが、長文の場合は思い切って「段落コンポーザ」を使い、「バランスの悪いところを修正する」という方法で組版すると、 8割がた満足のいく組版が、短時間でできると思います。「段落コンポーザ」を使った微調整のテクニックは、また今度、解説いたします。
ちなみに「日本語コンポーザ」と「欧文コンポーザ」は、その言語に対して設定状況が大きく異なります。特に、日本語の段落に欧文コンポーザをかけてしまうと、日本語独自の組版機能である「ルビ」「禁則処理」「文字組みアキ量設定」が無視されてしまいますので、日本語では必ず「日本語コンポーザ」をあてます。
欧文に「日本語コンポーザ」をあててしまうと、どのような問題が発生するか?
下の写真を見てください。
左が「欧文段落コンポーザ」、右が「日本語段落コンポーザ」です。点線はテキストフレームの枠です。いかがでしょう? 赤線ところ、「欧文合字」がはずれてしまいました。
※「欧文合字」とは、「fi」「ff」など、ある文字の組み合わせの場合に、その文字がつながったような形の文字を使います。この文字のことを「合字」といい、通常欧文では「合字」を使います。
※ここでは、コンポーザの説明のために「Th」の合字を使用しています。OpenTypeフォントを使用した場合「Th」の組み合わせも合字になってしまいますが、この「Th」の合字は避けたほうがいいようです。検索・置換などを利用して「Th」の合字は解除することをおススめします。
そして、何よりも大きな違いは、フレームから1行落ちてしまっていることです。
下記の写真を見てください。 こちらは「欧文コンポーザ」の方です。
文字をオールセレクトした状態ですが、InDesignが1行をどのレベルまで意識しているか見てください。特に一番下の行の「g」のところ、ディセンダライン(gのベースラインの下の足の部分)までの高さまで1行として認識しています。そのおかげで、点線のフレーム枠からgのディセンダの部分がはみ出していますが、ここまでの高さを1行として認識し、このフレームにしっかりおさまっています。
これに比べて、下の写真は「日本語コンポーザ」の方ですが、一番下の「catalogue」の「g」の部分を見ると、ディセンダ部分は1行の行の高さからはみ出していて、gのディセンダ部分が行内ではないと判断されていることがわかります。そのため、その下の「interesting」の「g」が行の高さの中と見なされず、フレームから行あふれとなってしまいました。
この例では、よく見ないとわかりにくいですが(cemeteriesのあたりがややわかりやすい)、 フォントの持つメトリクス情報(文字と文字の間の詰め具合の情報)にも、日本語コンポーザではバラツキが発生します。
このような4〜5行程度の組幅のせまいものでしたら、あまり気にせずに読むことはできますが、これが、書籍やannual reportのようなある程度組幅や文字量のあるものになると、その差が大きく表れて、欧米人が読んだ時には雑な組版に見えてしまい、その版元や企業の信頼度にも影響してしまいます。
また、作業する方も、天地のマージンに対して、ディセンダーラインを1行内と認識して流し込めるほうが、組版作業が効率的です。
欧文テキストの組版をする際は、ぜひ「欧文コンポーザ」を使ってください。
ありがとうございました。やったことのない英文を組もうとして、うまくゆかず大混乱。知らずに日本語段落コンポーザと格闘しておりました。もう少しで討ち死にするところ、こちらの基本講座で救われました。欧文組版の情報これからも期待しております。
返信削除ド素浪人さん、温かいコメントありがとうございました! これからも、少しずつですが、役立つ情報をアップしていきます。
返信削除とてもわかりやすい解説、本当に感謝です。
返信削除これからも楽しく購読させていただきます。