2011/06/16

InDesignによる欧文組版の基本操作その5

前回までの基本的な事項をまとめます。

  1.(段落パネル)コンポーザ=欧文コンポーザ
  2.(文字パネル)文字揃え=欧文ベースライン
  3.(段落パネル)行送りの基準位置=欧文ベースライン
  4.(段落パネル)グリッド揃え=なし
  5.文字パネルカーニング=メトリクス
  6.引用符英文引用符を使う。
       (半角引用符[いわゆる「まぬけ引用符」は使わない。)

ハイフネーション その1
今回は、InDesignでの「ハイフネーション」について、その機能や扱い方について、2回に分けて説明します。InDesignでのハイフネーションは、InDesignの辞書に基づいて自動でハイフンを入れる方法と、手動でハイフンを入れる方法があります。まず、自動でハイフンを入れるための説明をします。

InDesignでのハイフネーションは、そのテキストに対し、「文字パネル」で指定されている「言語」の辞書に基づいて入ります。
テキストをオールセレクトし、上図の赤枠の部分を、該当する言語に変更してください。
英語の場合、アメリカ英語やイギリス英語でもハイフネーションの位置が変わりますので、必ず確認しましょう。

言語が「日本語」のままになっていると、ハイフネーションは基本的に入りません。
和欧混植の場合は、まず、オールセレクトで全てに「日本語」をあて、その後、再度オールセレクトで「米語」をあてると、1バイト文字の英数字にのみ「米語」が設定されます。
左は言語が全て「日本語」、右は欧文部分は「英語:米語」

ハイフネーションの設定は、「段落パネル」のプルダウンメニューより行います。
赤枠の上側「ハイフネーション」は、ハイフンを使うか使わないかの「ON/OFF」の設定です。下側の「ハイフネーション設定」ウィンドウで細かい設定を行います。
※上図はCS4です。CS3では j)の文章表現が違っています。CS2以前では、j)はありません。  
a) ハイフンを使うか使わないかの「ON/OFF」です。

b) ハイフネーション処理をする単語の最小文字数を指定します。
  デフォルトでは5文字になっていますので、「often」などが文末にきた時に
  「of-ten」のように分かれます。

c) 単語の先頭を何文字目から切るかを指定します。
   デフォルトでは2文字になっているので、「already」が行末にきたときに、
  「al-ready」のように分かれます。

d) 単語末を何文字目から切るかを指定します。
  デフォルトでは2文字となっているので、「talked」が文末にきたときに、
  「talk-ed」のように分かれます。

e) 連続して何行までハイフンを続けるかの制限をかけます。
  デフォルトでは、最大3行まで続けてハイフンが入り続けることができます。

f) 段落設定が「左揃え」で「欧文単数コンポーザ」を使用している時のみ有効な機能です。テキストフレームの右端からどれくらいの距離までの間でハイフンが入るかの設定をします。
しかし、実際には「右端から何mmまではハイフンは入れない」という細やかな設定はできず、数値を増やすとハイフンの入る割合が減り、文末がややでこぼこ感のある感じになります。「なるべくハイフン処理をしてでこぼこ感を出したくない時」は「0」にし、「少しでこぼこ感を出したい時」は「5〜10mm」くらいの数値から調整します。効果の具合は、使用しているフォントやサイズにもよりますので、使用する場合は、全体にバランスをみながら決めていきます。
上は数値「0mm」下は「10mm」。


g) スライドバーで、全体的にハイフンを多めにするか少なめにするかの調整ができます。
  
h) 大文字で始まる単語に対し、自動でハイフンを入れるかどうかのON/OFFです。大文字で始まる単語には固有名詞や人名が多いため、これらに対してハイフンを入れない場合、または入れても気を配る必要がある場合は、ここのチェックを外し手動で処理するようにします。

i) 欧文組版では、基本的に段落末の単語はハイフネーション処理はしない方がよいので、通常はチェックを外しておきます。しかし、短め目の組み幅で、1〜3行の短い文章が続くような場合、段落末に長い単語がきた場合にハイフネーション処理が必要になってきます。そのような場合に使用すると便利です。

j) 欧文組版では、ページをまたがってハイフンで単語が切れてしまわないように気をつけます。同様に、2段組の場合やフレームが分かれる場合も、その境目で単語がハイフンで切れないようにすることが望ましいですが、文章量や組み幅、フォントサイズなどによっては難しい場合があります。そのような場合はチェックを入れ、許可します。

デフォルトの設定を使わない
ここで考えたいのは「デフォルトのままでいいのか?」ということです。これは私の経験値からの見解ですが、InDesignが組版ソフトとしてメジャーになってから、欧文組版でハイフンがとても目につくようになったと思います。「目につく」というのは「多すぎる」という印象です。これは、多くの場合「デフォルトのまま」作業しているからではないか、と感じています。そこで、今回、b) c) d) e) の数値について、下記の設定をお勧めしたいと思います。
デフォルトのb)単語の最小文字数 5文字 と、c) d) 2文字の組み合わせでは、短い単語にこまごまとハイフンが入ってしまい、また、d) 最後の前の文字数が 2文字は「--ed」や「--er」などで細々と切れてしまうため、あまり見栄えがよくありません。もちろん 「--ed」「--er」などで切れるのがダメという意味ではなく、上記のような設定をしておき、こまごま切れるのをなるべく避け、でも入れたい場合は手動、またはその段落だけ設定を変えて調整する、という方法をとっていくと、読みやすく仕上がっていくと思います。

次回は「手動」で調整する場合についてなど、引き続きハイフネーションについて説明したいと思います。 

4 件のコメント:

  1. はじめまして、DTP Transitから来ました。
    前回の引用符は大変参考になりました!早速InDesignの環境設定にチェックを入れました。
    ところで、本文に合成フォントを使用している場合は引用符は和文フォントになってしまいますよね。その場合はどのように対応されていますか?

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  2. SUBIさん、コメントありがとうございます。
    ご質問の件、
    「InDesignによる欧文組版の基本操作その4」の下の方に追記しました。ぜひ試してみてください。

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  3. 初めまして。
    小林章さんのブログから来ました。

    とても分かりやすく実用的で一気に読ませていただきました。
    仕事でデザイナー兼プルーフリーダーをしていますが、引用符の使い方は気になることが多いです。
    また同じ英語でも米・英・豪の差異など、様々なスタイルガイドとにらめっこしつつ、勉強中です。

    これだけのコンテンツを配信されるのは大変かと思いますが、応援しています。次回も楽しみにしています。

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  4. Fumiさん、温かなコメント、ありがとうございます!とてもうれしいです。
    Fumiさんも欧文に関わるお仕事なので、きっとプラスアルファしたい情報が出てくるかもしれません。その際は、ぜひ遠慮なくお寄せください。いろいろみんなで共有できればいいナと思います。
    これからもどうぞよろしくお願いします。

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